外科医の腕前イコール手術の上手さだと思ってほぼ間違えはないでしょう。
ただ、腕前の良し悪しの判断は難しいことが多いです。
外科医である私自身でさえ、他の外科医の腕前は判らないことが多いのですから。
もちろん一緒に手術をすれば、腕の良し悪しははっきり判ります。ですが、一緒に手術をするのはごく限られた範囲ですから、もしそれ以外の外科医の腕前を聞かれたら「わかりません」と答えるしかありません。
手術は手作業ですから、基本的に手先が器用な人が上手であることは間違いありません。でも手先が器用かどうかは見た目では判りません。また、勉強ができることと器用不器用はフィールドが違います。どちらかというと絵などの芸術系が得意な人は器用で、手術も上手いことが多い気がします。
昔は紙のカルテでしたから、手術記録も手書きでした。手術所見を図にすることも多くて、それを見てこの人は手術がうまそうだと思ったことはあります。でも今はそのような記録はしませんので、他の外科医の技量を測る機会はあまりなさそうです。
ネットや本の評価は信じないほうが良いと思います。学会などで高名な外科医が実は手術が不得意だったなどということは昔からよくあります。むしろ近い人達の「あの先生は上手いらしい」という生の声のほうが事実を反映していることが多いと思います。
「手術が上手い」という外科医の中には２つのタイプがあると思います。
一つは淡々と正確に仕事を繰り返すことが得意なタイプ。
もうひとつは常に新しいことにチャレンジして術式の開発を得意とするタイプ。
両者が兼ね添わっていれば理想ですが、なかなかそうはいきません。どちらかに偏る傾向があります。
大学病院などで活躍するのは後者、市中病院で活躍するのは前者でしょう。
私はクリエーティブとはいえませんので、どちらかというと前者に属すると思います。
先ほど器用さと勉強は違うと言いましたが、最新の医療情報を収集することは両者ともに最低限必要なことは論を待ちません。
