多汗症、腋臭症(わきが)の手術共に、保険診療が適応されます。また、腋臭(わきが)の手術は、1時間半程度の時間がかかるため、即日の手術対応ができません。
わき汗のお悩みについて
わきの下の汗のことで悩んでおられる方々へのアドバイスです。
問題は2種類あります。汗が多い問題と臭いの問題です。この二つの問題は対処方法が異なります。
汗の量の問題(多汗症)について
汗の量の問題ですが、これは多汗症と呼ばれるもので、わきの下に限らず手のひらなどにも起こります。
解決方法は、これはわきの下に限定されたものですが、ボツリヌストキシンという薬を注射する方法が有効です。
ボツリヌストキシンといえばしわの改善に使われる注射と思われる方もいらっしゃると思いますが、基本的に同じ薬です。要は神経の伝達を遮断する作用を利用するのです。
しわの場合は顔面の筋肉を弛緩させてしわを伸ばす理屈ですが、わきの下にボツリヌストキシンを打つと汗を産生する汗腺を働かせる神経回路が遮断されて効果を発揮するのです。
ただし、その効果は限定的で、半年から1年の間に効果は無くなってしまいますので再度注射を打つ必要が出てきます。
制服にシミができて仕事上困っている人は年に1回ボツリヌストキシンを打つことで、悩みはほぼ解消されると思います。
臭いの問題(腋臭症)について
アポクリン汗腺という特殊な汗腺の活動が活発な人に起こります。いわゆる「わきが(腋臭症)」です。
神経伝達路の違いでボツリヌストキシンの効果はあまりないとされていますので、皮膚の下にあるアポクリン汗腺を手術的に除去する必要があります。
別に特別な技術を要する手術ではないのですが、皮下のアポクリン汗腺をなるべく残さないように丁寧に取り除かなければならないことと、一部にやや太い血管が存在しているため、術後に血種という血液のたまりができる合併症が生じるリスクがあります。
両側で約1時間半くらいかかる手術ですので、当院では即対応はできません。まずは手術日を決める必要があります。手術は健康保険が適用されます。
自己臭神経症について
「わきが」で私たち医療側が注意すべきことは「わきが」を主訴に受診される患者さんのうち、少なくない割合で「自己臭神経症」の方が存在することです。
わきがの臭いは自覚が難しいです。自分の臭いが気になると話される方に対しては家族などの親しい関係の他人に臭いを指摘されたことがあるかどうか伺います。無い場合は神経症を疑います。さらに「他人が咳き込むのが気になる」と言われたたら、「神経症」と診断してよいと思います。もちろん神経症の人に手術は行いません。