当院では保険診療の他に美容目的の自費診療（美容皮膚科・美容外科）も行っています。
そもそも形成外科学の中に美容外科学も含まれていますので、研修医時代に医局から美容外科にアルバイトに行かされました（当時は大学病院では美容外科診療は行っていなかった）。
現在、美容外科のクリニックは至る所で見かけます。一昔前は美容外科は繁華街の少しうらびれたところに目立たなく存在していて、受診する人自体も少なかった感じでした。
今やかなりメジャーになった美容外科ですが、その診療はかなり健康保険診療と異なっているのが実態です。
医療事故（基本的な外科のトレーニングを受けていたら起こらないようなレベルのもの）は年に数件、消費者センターに相談される詐欺に近い料金体系などはしばしばニュースになりますから、美容外科は近づきにくいイメージを持っている方が多いのではないかと思います。
私も少なくない軒数の美容外科クリニックで非常勤勤務経験がありますので、よくわかっているのですが、美容外科は「医療」というより「ビジネス」に近いものです。いかに効率よく顧客から利益を上げられるかが最重要となりますので、施術前の勧誘に全力を注ぎ、その後のフォローはいい加減となってしまう傾向が強く、患者さんの満足度は必ずしも高くありません。リピーターを増やすより宣伝によって新規客を常に集めてビジネスを回してゆくほうが効率的ということになるのでしょう。
当院における医療は受け手が満足しなければ意味が無いという前提で行っていますので、美容目的であっても私自身がはっきりした効果を望める治療方法以外は行いません。
ただし、美容医療は医学的に正しくても、それを受けた患者さんが結果に満足しなければ「失敗」とされてしまうシビアさがありますので、その適用に際しましては保険診療以上に神経を遣います。
当院で行う自費診療は「格安」にしていません。格安料金は美容外科においては「客寄せ」のアピールであることがほとんどで、他の診療を併せて受けさせて儲けを出すシステムで成り立っているのです。
当院での自費診療の料金は使用する薬剤や機器の原価に加えて妥当と考える技術料を合わせたものとなっています。
そもそも医療にかかる費用は古今東西、安いものではありません。日本の健康保険制度が格安な料金で医療を受けられるようになっているため、自費診療費とのギャップが大きくなってしまっていることは否めません。そのあたりをご理解いただけると助かります。
私が強調したいことは、美容医療は決して「無理してまで」受けるべきものではないということです。より良い日常生活を送ることができる助けになるものですので、資金的に余裕のある範囲内で受けるべきものなのです。
それは人それぞれで異なると思います。私自身、若い頃よりテニスをやっていたせいで顔に目立つシミが幾つもあります。治療によってきれいになるのはわかっていますが、別段受けようとは思いません。自分では気にならないのです。
でも同じようなシミを気にする人がいてもまったくおかしいとは思いませんし、そういう方は積極的に受診していただきたいと思います。
治療効果とかかる費用の説明を聞いて治療を受けるかどうか決めればよいのです。
美容医療でお金を使い果たしてしまって、若返った顔で旅行やショッピングに行けなくなってしまったら本末転倒ですから。
蛇足になりますが、女性は高額な化粧品を割と簡単に購入してしまう感じがしています。
私に言わせれば、日々使用する化粧品にかけるお金を美容医療に振り替えたら、その効果はたぶん数百倍になります。
でもそういうことではないのかもしれません。私にはわからないのですが、綺麗な容器にほんの少し入った化粧品を有難く使うこと自体が女性の日常生活の満足度を高めているのだとしたら、何も言うことはありません。
