「科の選択」といいましても、患者さんがどの科にかかったらいいだろうと悩む話ではありません。
医学部の学生が将来自分は何科の医者になるのか決める話です。
医学部ではすべての科の勉強をします。(厳密には「すべて」ではないこともあります。例えば形成外科は昔は国立大学には少なかったので、形成外科の講義は受けたことがない医師は多かったです)。
卒業間近になって多くの学生は自分の進路を決定することが多いです。
もちろん、生家が開業医で継承するつもりの人は親と同じ科に進むことを入学前から考えているでしょう。
特に親類などに医者がいない家庭で育った私などは漠然と外科がカッコよさそうだから外科がいいかななどとまったく適当に考えていました。
実際に科を選択する際に多くの影響を与えるのがクラブの先輩です。
何故か医学生の多くは運動部に所属していて、親しい先輩の居る科に引っ張られることが非常に多かった印象があります。その結果ある科は同じ運動部出身者ばかりというようなことも起こります。
運動部に所属していない学生ももちろんいるわけですが、彼らは上下関係のしがらみが無いので、自分自身の考えで決められます。
でも、それなりに悩むことも多いでしょう。
僕の同級生でS君という人がいました。特に親しくもなかったので話をする機会は6年間でもほとんどなかったS君でしたが、たまたま精神科の学外実習で一緒になった際、彼は精神科に興味をもっているんだと私に話しました。私は外科系志望だったので、その場では「へえ~そうなんだ。」程度の返答しかしなかったんだと思います。
その日の実習が終わって担当の教官である助教授と雑談する機会があり、「精神科に興味がある人がなかなかいなくて」とつぶやかれたので、とっさに彼のことを思い出して「そういえばS君が精神科に興味があると言ってましたよ」と返答したら、「本当?是非、彼と話をしたい!」と目を輝かせました。
そのすぐ後に助教授はS君を近くの喫茶店に誘って・・・
S君は今やテレビや評論で引っ張りだこの筑波大の看板教授です。
卒後の臨床研修制度が昔とは変わってしまっているので、今の医学生の科の選択は以前とは違っているかもしれません。