最近、連続して脂肪腫についての受診が続きました。
相談の内容が他の病院で入院が必要と言われて躊躇しているとのことです。
脂肪腫は事前の画像診断でよほど大きかったり、頸部などの重要な神経・血管が隣接している場所などを除けば局所麻酔で摘出することが可能なできものです。
ただし、ドレーン管理が基本的に必要ですから、入院設備のある病院なら入院を勧められることは無理からぬことだとは思います(私も以前勤務の病院なら入院を勧めていました)。
世の中の多くの人は簡単には入院はできません。仕事、子供の世話、介護などで一日も休めない状態の方々は大勢います。もし、癌の治療であるのなら休みを取って入院せざるを得ませんが、命に関わりのない脂肪腫の治療で2,3日の休みを取ることを躊躇してしまうでしょう。
当院はクリニックですから入院はできません。そのため脂肪腫の手術を受けた方には翌日必ず受診してもらっています。また手術後のドレーンの扱いに関して十分な説明をしています。そのため脂肪腫の外来手術で今までトラブルは経験していません。
脂肪腫で大学病院を受診されたある患者さんは、全身麻酔で4日間の入院と説明されたそうです。初診時には外来で4時間待たされたそうです。その後たまたま他医を受診した際に当院を紹介されました。当日の手術を希望されたため即摘出の局所麻酔で行いました。40分程度で終了し、大変喜ばれました。
もし、大学病院で治療を受けたら、全身麻酔をかけられたうえ執刀は研修医ということになると思います(脂肪腫の摘出術は外科の1年生に格好の教材ですから)。
脂肪腫の患者さんにとって大学病院の治療のメリットは全くないのです。多くの時間を要するうえに負担する費用も4,5倍かかってしまいます。
もちろん当院もすべての脂肪腫を摘出できるわけではありません。事前に画像診断を行って局所麻酔で充分安全に摘出できると判断した場合のみ行っていますので、場合によっては他の病院に紹介することもあり得ます。
ただ、今までの経験から脂肪腫の9割は局所麻酔で行えると考えています。