脂肪腫もありきたりなできものといえます。
粉瘤と混同される場合も多く、粉瘤のことを「脂肪の塊」と表現する人がいます。粉瘤の中身が白色の角質なので脂肪のように見えるためかもしれませんが、粉瘤は脂肪とは縁もゆかりもありません。
脂肪腫について
脂肪腫と粉瘤の大きな違いは、粉瘤は皮膚の表面にできるものですが、脂肪腫は皮膚の下の筋肉の上にできます。
脂肪腫は書いて字のごとく脂肪細胞が増殖したものです。見た目は皮下脂肪とほとんど区別できません。脂肪細胞が増えると聞いて肥満を連想する人もいるかもしれませんが、脂肪腫は食生活とは関連がありません。脂肪細胞が腫瘍のように増殖したものなのです。
脂肪腫は皮下脂肪と同じ細胞からできていますので、非常に柔らかいです。
粉瘤は粘土くらいの硬さを感じますが、脂肪腫はマシュマロのように柔らかく感じます。
脂肪腫も身体の至る所にできる可能性がありますが、背中が最も多いのは粉瘤に似ています。でも粉瘤のように浅い場所にはありませんので、気づかれるのはかなり大きくなってからのことが多いです。
ほくろのように見た目が気になったり、粉瘤のように炎症を起こしたりすることはありません。そして脂肪腫はかなり大きくならないと気になりませんので、摘出することはほくろや粉瘤のように簡単ではありません。
大きさが大きいこともさることながら、筋肉の上(場合によっては筋肉の中)という位置に問題があります。筋肉の表面には多くの血管があります。皮膚の血管のように細いものではありませんので、切りっぱなしにはできません。必ず処理してゆく必要があります。
ですので、脂肪腫の摘出には時間がかかります。
当院の脂肪腫除去
ほくろや粉瘤が10分程度で終了するのに対して、30~40分かかってしまうことも稀ではありません。また、ほくろや粉瘤が手術後の再診は1週間後くらいに糸抜きに来てもらえばいいだけなのに対して、脂肪腫は手術後の傷の内部に血液の溜まりができるのを予防するためにドレーンという血抜きの管を入れておくために翌日受診してもらう必要があります。
蛇足に近いですが、脂肪腫にも悪性のものがあります。脂肪肉腫というもので極々稀ですが、命にかかわりますので病理組織のチェックは必須です。
症例1
- 術前 右肩甲部の脂肪腫です。かなり大きくて「こぶ」とは用言する人もいます。触ると柔らかいです。
症例2
- 術前 左側腹部の脂肪腫です。
- 術前(マーキング) 写真では判りにくいので印をつけました。点で囲まれた部分に柔らかい脂肪腫を触知します。
- 標本 真上の皮膚を切開して脂肪腫を取り出したところです。おおきな脂肪の塊がゴロリと出てきました。
料金について
保険診療料金に関しては受診当日に手術を行った場合、3割負担の場合で1万円から3万円程度となります(初診料、検査料含む)。